むかし、カウンセラーの先生に「人間の生き方は『向かう』か『離れるか』だけ」なんだと教えてもらった。
それは物理的な距離だけではなく、興味や関心という意味でも人間は「向かう」と「離れる」を繰り返して生きていくということなのだそうだ。そう考えたとき、僕は下北沢という街に対して、向かったり離れたりを繰り返していると思った。
初めて下北沢を訪れたのは高校時代。実家を出た姉と久々に会った場所が下北沢だった。埼玉で引きこもりのような生活を送っていた僕には、下北沢は大人の街で、背伸びしているような浮き足立った感覚になったことをよく覚えている。
6歳離れた姉は、僕にとっては逆らう気さえ起きないほどの強大な存在ではあったが、古着屋特有のちょっと入りにくい雰囲気のお店にも躊躇なく入っていく姿には、こんなに頼もしい存在もいないと思った。その日、姉と一緒にたくさんの古着屋を回ったことをきっかけに僕はファッションが好きになり、お金を貯めては下北沢に古着を買いに行くようになった。
半引きこもり状態だった僕が外に出るようになったきっかけは、そんなとこで。そのときの出来事が、下北沢が、当時の僕にとってどれだけ救いになっていたのかは、いまになってよく分かるようになった。
しかし古着への熱は高校時代ですっかり冷めてしまい、大学時代はめっきり下北沢に行かなくなった。そんな僕が下北沢に再び足を運ぶようになったのは、大学3年生のときに始めたプレスラボのインターン。
下北沢経済新聞という下北沢のローカルニュースを扱うWEBメディアで、下北沢に新しくオープンしたお店への取材を約1年半経験させてもらった。僕にとって古着の街でしかなかった下北沢にも、いろいろな顔があるのだと初めて知り、もっと知りたいという欲求が生まれた。
そしていま、新卒で入った会社を退職し、7月からプレスラボに戻ってきた。いまの僕にとって、下北沢は働く場所であると同時に住む場所でもある。
「下北沢はいい街だと思う」
でもそれは、みんなが口をそろえてそう言うので、僕も真似して言っているようなものだ。まだまだ下北沢ビギナーの僕には、下北沢は奥が深すぎる。それでも「下北沢はいい街」だと、みんなが口をそろえて言っているところを、僕はいい街だなと思っている。
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