あけましておめでとうございます。
プレスラボは12回目の新年を迎えました。
誰が読んでんだろ? と疑問になりながらも、今年もそれぞれのコラムをお送りします。
テーマは10年代。
最近はかつての80年代や90年代のように、10年で区切る雰囲気も薄くなってきましたが、
10年代も終わりということで、全員で振り返ります。
2011年、震災のあった年、僕は仕事で中国の上海にいた。中国大陸向けのECサイト、そのオウンドメディアの記事作成ってことで、当時からしてもうまくやれば相当なビッグマネーが転がってきてもおかしくなかったが、まあ現実的には外国人の気持ちを理解してコンテンツを作ることはかなり難しく、僕たちのプロジェクトは難航していた。
先日、永井荷風の文学講座に参加した。とても興味深く話を聞いていたのだけど、講師は普段大学で若い学生に教えられている方だけあって、荷風の特徴の説明に「インスタ」や「SNS映え」などの言葉を使われていた。参加者のほとんどは70代前後の高めの年齢層で、途中で眠り始めてしまった方が何名かいた。外との温度差でそうなったのかもしれないし、寝不足だったのかもしれない。私は授業で眠るのは学生だけじゃないんだなと当たり前のことを知りほっとすると同時に、ひょっとして眠ってしまった理由が知らない言葉にあるのだとしたら、70代になったとき私は起きている側にいるのか、それとも寝ている側にいるのか、ふと考えてしまった。
2010年の1月、私はちょうど成人を迎えていた。「せっかくだし、はたちの抱負を発表しようよ」と飲み会の席で言い始めたのは私だった。じゃあ言い出しっぺから、となったものの「えっと……」とそのまま言葉に詰まる。途中で友達みんなから「何も考えてないじゃん!」と突っ込まれて笑い合った。酔ってたせいなのか、なんだか無性に楽しかったことを覚えている。
2010年からここまでの10年間は、これまでの人生の中で最も、環境が変わる期間だった。というのも、2010年当時私は高校生、その後は大学生、就職、独立、フリーランス期間を経て2度目の就職。置かれている立場も付き合う人も目まぐるしく変わっていった。その中で、自分にとって最も大きな変化だったのは、実家からの独立だった。2019年の秋のことである。
転職に独立、結婚、離婚、新しい仕事たち。自分の2010年代を振り返ってみると、コンテンツがそこそこ充実している感がある。いや、こんなもんか。10年という単位はなかなかに長くて、それなりに変化もあるよなあと思う。だって、考えてみてくださいよ。10年って、赤ちゃんが小学4年生に成長するほどの年月だし。
2010年代はマッサージに明け暮れていた。マッサージといっても受ける方じゃなくて、施術する方だ。僕は2009年にサラリーマンを辞めて、マッサージの専門学校に入った。専門学校の課程は長くて3年もかかるし、試験も受けなくてはいけない(医療系の国家資格という扱いになる)。卒業した後は寝たきりの高齢者の家に行ってマッサージをしたり、自分でマッサージのためのスペースを持って、お客さんに来てもらったりした。
2010年代は深い失意と迷走から始まったように記憶している。僕はすでに自営業として北欧・フィンランドの音楽に関わっていて、でもまったく食えなくて、どうしよう、どうすればと貯蓄を切り崩しながら考える日々であった。生活を成り立たせるためにバイトもいくつかしていたような。
この10年を振り返ってみる。私にとっての大きな変化といえば、お酒に強くなったことだ。ビールを舐める程度で酔っ払い、頭痛や寒気に見舞われてしまうという面倒な体質だったが、今ではグラスに半分程度ならそれほど酩酊しなくなった。